地方都市の住宅街に建つ築40年の木造2階建て住宅が、今回のリノベーションの舞台となりました。施主は、亡くなった祖父母からこの家を受け継いだ30代の夫婦です。建物は長年の風雨に耐えてきたものの、冬場の猛烈な寒さと、細かく仕切られた使いにくい間取り、そして耐震性への不安が大きな課題となっていました。建て替えも検討されましたが、夫婦は幼い頃の思い出が詰まった柱や梁を活かしたいという強い希望を持ち、フルリノベーションを選択しました。工事はまず、建物の骨組みだけを残して解体する大規模なスケルトン化から始まりました。調査の結果、一部の土台にシロアリの被害が見つかったため、最新の薬剤散布と木材の交換を行い、基礎部分にはコンクリートを打ち増しして補強を施しました。最も力を入れたのは、建物の性能向上です。家全体を高性能な断熱材で包み込み、すべての窓を樹脂サッシのペアガラスに交換したことで、ZEH基準に近い断熱性能を確保しました。間取りは、1階の細分化されていた和室とキッチンを一つの大きなLDKに統合しました。ここで活かされたのが、既存の太い松の梁です。天井をあえて高く上げ、立派な梁をあえて見せるデザインにすることで、古材の力強さと現代的な開放感が共存する空間が誕生しました。2階は、かつての個室の配置を活かしつつ、ウォークインクローゼットや書斎スペースを新設し、現代の共働き夫婦のライフスタイルに合わせた機能的な設計に変更されました。外観も、古いモルタル壁の上からガルバリウム鋼板を重ね貼りし、スタイリッシュな黒の外壁に一新されました。リノベーションが完了した家は、見た目は新築そのものですが、一歩中に入ると随所に古い家から引き継がれた温もりが感じられます。断熱改修の効果は絶大で、以前は外気温と変わらなかった玄関ホールも、冬場でもエアコン1台で家中が一定の温度に保たれるようになりました。この事例は、古い建物を単に壊して新しくするのではなく、既存の価値を認め、現代の技術で補強し、次の世代へと繋いでいくリノベーションの真髄を体現しています。
築40年の木造住宅をリノベーションで現代風に蘇らせた事例