その家が建てられた30年前、1階の奥にある6畳の和室は、来客用の寝室として、あるいは子供たちが幼い頃の遊び場として、家族の中心的な場所でした。イグサの香りが漂うその部屋で、家族は季節の行事を楽しみ、子供たちは畳の上を転げ回って育ちました。しかし、月日が流れ、子供たちが独立して夫婦2人の生活になると、その和室は次第に使われない「開かずの間」のような存在になっていきました。畳の上を歩く機会が減ると、湿気がこもりやすくなり、家具の重みで畳が沈んでいる箇所も目立つようになりました。50代になった夫婦は、これからの人生をより快適に過ごすために、この部屋をフローリングの多目的ルームへ改装することを決めました。リフォームの初日、長年家族を見守ってきた古い畳が運び出される様子を見て、妻は少しの寂しさを感じましたが、新しく搬入された明るい色のチェリー材のフローリングを見た瞬間、その気持ちは期待へと変わりました。工事が進むにつれ、暗かった和室は、窓からの光を反射する明るい空間へと変貌を遂げました。床がフラットになったことで、重い掃除機を持って歩く負担が減り、膝に優しくない座卓生活から、お気に入りのソファに座る生活へとスムーズに移行できました。完成した新しい部屋には、かつての押し入れを改造したオープンな棚が作られ、そこには夫婦の共通の趣味である旅行の写真や思い出の品が飾られています。驚いたのは、リフォーム後に家全体の空気の流れが変わったことでした。畳の埃っぽさが消え、木の香りが心地よく漂うその場所は、今では夫婦が朝のコーヒーを楽しむ一番のお気に入りの場所になりました。お正月には、かつてのように孫たちが遊びに来ますが、今度はフローリングの上にラグを敷き、椅子に座って賑やかに食事を楽しみます。住まいの形を変えることは、過去を消すことではなく、今の自分たちの生活に合わせて思い出を更新していくことなのだと、新しくなった床を歩きながら夫婦は実感しています。