私が初めてリフォームというものに挑戦したのは、築35年の古い賃貸アパートに引っ越した時でした。その部屋の壁は長年の生活で黄ばんでおり、どこか暗い印象を与えていました。大家さんに相談したところ、退去時に元に戻さなくて良いという条件で自由に壁を塗って良いという許可をもらえたため、私は意気揚々とホームセンターへ向かいました。選んだのは、目に優しいスモーキーなブルーのペンキです。実際に作業を始めて分かったのは、塗装リフォームの成否は塗る作業そのものではなく、その前の養生で決まるということでした。マスキングテープとマスカーを使い、床やコンセントプレート、窓枠などを1ミリの隙間もなく覆っていく作業は、想像以上に地味で根気のいる作業でした。3畳ほどの壁を塗るために、準備だけで3時間を費やしましたが、この段階を丁寧に済ませたことが後で自分を救うことになりました。ペンキを塗り始めると、最初はムラが気になり焦りましたが、1度塗りが乾いた後に2度塗りを重ねると、驚くほど均一で美しい発色に変わっていきました。ローラーを転がす音だけが部屋に響く時間は、どこか瞑想に近い静かな楽しさがありました。途中、ペンキを床にこぼしてしまうというハプニングもありましたが、完璧な養生のおかげで被害は最小限に抑えられました。翌朝、完全に乾いた壁を見て、私は自分の部屋が全く別の場所に生まれ変わったような衝撃を受けました。光の反射が柔らかくなり、置いてある古い家具までがお洒落なヴィンテージ品のように見えてきたのです。このリフォームにかかった費用は、ペンキ代と道具代を合わせても1万2000円ほどでした。プロに頼めば数倍の費用がかかったはずですが、自分の手を動かして得た達成感は金額には換算できません。もちろん、近くで見れば細かな塗りムラやはみ出しもありますが、それもまた自分の暮らしの一部として愛おしく感じられます。住まいを自分の手で変えられるという自信を得たことで、次は棚を作ろうか、床を張り替えようかと、私の頭の中は新しい計画でいっぱいになりました。DIYリフォームは、単に部屋を綺麗にするだけでなく、住む人の心まで明るく塗り替えてくれる力があるのだと確信した体験でした。